猿ロック the movie

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<イントロダクション>
 ドラマから映画化するものには、ドラマでの人気を経て,実現されるものもあれば 映画化を前提にドラマがスタートする場合もある。『猿ロック』はこの後者である。 しかし、ドラマから映画化というのは大きな賭けだと思う。 ドラマが良くても映画でうまくいくかどうかは未知。しかも、ドラマ化の時点で映画化が決まっているのだから、尚更賭けは大きい。映像化される以前に原作が人気だったとは言え,ドラマから見る人も多いし、そんな視聴者を含め ドラマを見る人たちの反応を見ぬうちに、映画へ進路向けるのは凄い。原作の有無に問わず、数ある映画の中には映画の規模に満たないものも稀にあるけれど、『猿ロック』は成功と言える。 映画から見る人間にも楽しい作品だ。
 現代ポップでありながら人情的な部分も滲み出るところ、鍵師が主人公という設定が珍しい。さらにアクションものだけど、主人公は強くはない。 だけど、大切なもののために全力を尽くすというまっすぐさが、主人公の魅力で,作品全体にも光を当てている。

<あらすじ>
 鶴亀商店街に鍵屋を構える,天才鍵師・猿丸耶太郎こと,サル。 彼は依頼された鍵を見事に開けるプロだ。 その実力は警察も認めるほど。 
 ある日、サルは事件現場にいた。 現場はまさに緊迫した空気が漂い,銀行強盗と警察とが対峙している。 現場突入を急ぐ,警察部隊の中心でサルは鍵を開けていた。 現場に居合わせた,水樹署長が人質となっていた。 無事鍵は開けられ、人質も解放され,犯人グループを確保された…しかし、警察はその中の一人を取り逃がしてしまう。 
 事件の報道を店で見ていた,サルたちのもとに 事件の人質の一人だった,マユミと名乗る 謎の女性が現れる。マユミは、勤め先で金庫を任されているが,記憶に障害があるため暗証番号が思い出せない。 そのため、金庫にある大切なものを取り出すために,鍵を開けて欲しいというのだ。美女の頼みに弱いサルはすぐ引き受ける。 とんでもない事件に巻き込まれることを知らずに…

<感想>
 物語が面白く伝わるかどうかのポイントはもちろん,ストーリーや演出もさることながら,主人公を始めとした,人物のキャラクターも大きい。 個人的に印象に残ったのは主人公サルのキャラクター性と、サルの妄想から現実への場面の数々である。 特にサルの人物像は重要だ。 サルがマユミに対して語る熱い思いは,直接語りかけているよう。 “お天道様はちゃんと見ている”や“本当に大切なものは心で見る…”、“人はみんな温かい気持ちを持っている。胸の奥にしまいこんでいて,忘れているだけ”といったふうな中々,最近の若者には中々言えない事をわざとらしくなく,言える熱い男なのだ。 最初の言葉はマユミと水樹に言う言葉で、二番目はサルないしは水樹が語る言葉,最後はマユミに対しての言葉。 二人に熱い言葉をかけるのは、二人の心の奥に温かさがあると信じているから,またそうだと知っているからだと思う。
 また、サルは決して暗い顔は見せない。これがサルという人物の見せるもう一つの魅力だ。笑顔が絶えないというのは,見ていて悪い気はしない。 むしろ周りかすれば気持ちがいいもの。サルの純粋な子供のような笑顔は、作品の魅力だ。これだけでも、見る価値があるだろう。
 サルは決して強くはない。 だから悪党が着ても,対等に戦うことはできないけれど,大切な人を守るという固い決心が糧となり,自身が持つ技術力を武器に立ち向かう姿は男らしい。鍵を開ける場面はやはりカッコいい。 特にカラクリ仕掛けの金庫との勝負の場面は見所。最初の場面もそうだったけど、危機迫る中,最後まで手を緩めることなく鍵穴を探る…そして極めてギリギリのところでやり遂げる。このハラハラドキドキな感じはスリルがある。 この他にも瀬戸際で危機を切り抜けるところが凄い。
 いくら鍵を開ける腕がいいとは言っても、心の鍵までを開けるのは難しいだろうと思った。プログラムのどこかにも書いてあったけど 信じることで心の鍵を開けられるのかもしれない。 サルはマユミに裏切られたと知らされても それでもマユミを見捨てることはなく,彼女の言う夢を信じ続けた。 その気持ちは行動にも表れて,固く閉ざされたマユミの心を徐々に開けていった。 事実が明らかにされていく中で,冷たい顔を見せてきたマユミがクライマックスでは、その表情に嘘がなく,サルを真っ直ぐ見るようになっていた。 この表情の変化は見逃せない。
 彼女は最後に“たくさん嘘をついてきたけれど、その中の一つを本当にしてもいいかなと思った”と言うけれど、サルが信じるようにマユミの夢だけは本当だったのではないかと思う。どんなに嘘を重ねたとしても,ずっと嘘を言うのも難しいし 人と関わる中で必ず気持ちがゆるむ瞬間はあるはず。 そんな時に本音が出てくるのだろう。 自分を信じてくれる人が側にいれば,なおさら。
“本当に大切なものは目では見えないもの”という言葉がある。 どうしても人は目で見えないものよりも,形あるものを求めてしまう。 お金は生きるために必要なものだけど、本当に大切なものは別にある。わかっていても,そうやって目に見えるものへ行ってしまうのはなんでだろう。 (時間に余裕がなく)先行きが不安な人々はみな,温かい心を胸にしまいこんでしまう。 特に世の中が不安定な現代は、人を思いやることが中々難しくて 助けを求める人にとって冷たく感じてしまう。 だけど、サルが言うように“人は皆、温かい心を持っている”というのは本当だと思う。だから、それを知っているだけで世界は違って見えてくることだろう。
 これもこの作品で語られることだが、“何もしなければ、何も起こらない。自分が何をやっても変わらないというこはない”というのは事実であり,そう信じて生きていけば きっと報われる日が来るはず。 政治資金問題や、税金が上に立つ人たちにより私用に使われるなど 信じることが困難な社会だけれど、“信じる者は救われる”という言葉があるように“信じることをあきらめてはいけない”。もちろん、物事を見分けることも必要だ。 でもどうか、疑うばかりの世の中にはならないあで欲しい。 不安は疑いに変わり、やがて惨事へとつながりかねないのだから。
 下町の人情。 これは日本人の宝物の一つだ。 下町に立ち並ぶ商店街の人々のようにお互いが助けあう温かさを取り戻し,協力し合う世の中にするために私も何かしたい。
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by jd69sparrow | 2010-03-02 22:59 | 映画タイトル さ行