ダーリンは外国人

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<イントロダクション>
 偶然の出会いから、付き合うことになった国際カップルの,さおりとトニー。 二人の出会い始めから物語が始まり、結婚するまでの道のりを描いたコメディ&ヒューマンストーリーをラブストーリーで味付けした,ふんわりとした空気と穏やかな風が漂うような映画である。 全ての恋人たちと恋をしたい人たちのためのバイブルもところどころに込められている。 笑って、泣いて、心も温まる贅沢に仕上げられた素敵な物語!


<あらすじ>
 さおりは漫画家を目指す日本のイラストレーター、トニーは日本でジャーナリストとして活躍するアメリカ人。 周りの目など気にせずに仲むつましく,また、異文化の違いもなんのそのな二人は毎日をエンジョイしている。 トニーは語学オタクという一面を持ち、日本人では中々疑問には思わないところをとことん突っ込んでくる。 また、感性の違いから面白い反応を返してくる。 そんなトニーの魅力に惹かれていく さおり。 しかし、さおりの父親だけは二人の交際を認めなかった。 夢も国際恋愛も中途半端なことに気付かされた,さおりは心を入れ替えて 英語の勉強に,漫画の仕事にと努力を惜しまず,没頭するのだが…
 
<感想>
 自分のことは主観的に見がちで,客観的に見ることはあまりないだろう。 でも、客観的に見ることで色々なことが見えてくる。 “自分のことは自分が一番よくわかっている”というけれど、自分では見えないところもあるわけで、人からしか見えない自分というものもある。 この定理のように、国と国との間に関しても同じことが言える。 やはり国が違えば、考えや目の付け所が違うはず。 今回はアメリカからやって来たダーリンの発想の面白さが描かれているけれど、逆に私たちが外国へ行って生活を始めた時も、その国の人には見えないところに気付くかもしれない。 
 日本に長い外国の方は少なくない。 今回登場するトニーもさることながら、日本に在住する外国人には日本人以上に日本に詳しい人が多いと思う。 中々ここまで研究し尽くして,滞在する国に馴染むというのは私たちの周りでは,そう多くないだろう。 語学オタクである,トニーだからこそかもしれないけれど、言葉のあらゆる言い方に疑問を持つ。 言われれば、確かに!と思うことが多いのだが、中々自分の国のこととなると気にならない。 当然と言えば当然かもわからないけど、不思議と言えば,不思議である。 しかも、聞かれた日本人がわからないという…決して他人事ではないのだから責めることはできない。知っている人が知っている。そう考えてみると、何気なく使っている日本語には不思議がたくさんあるし、その語源は深いものなのだと改めて思う。 どういう場面で使うのかや、意味までは知っていたとしても どうしてそういう言い方なのかまでは,そうそう知る機会はない。 
 トニーは使い方を間違えることも多くあるけれど、様々な日本語が出てくるゆえに、ことわざや慣用句、熟語など,言葉への興味が増す。 トニーの出す疑問を調べたくなる。 言葉の使い方も考え直したくなる。 日常的に私たちが使う言葉は、話し言葉としてはごく自然に感じても 間違いが意外に多い。 それを日本語を母国語としない人が気付くと言うのがすごいし、また,日本語の難しさと言うのも改めて実感。
 トニーの名言(珍言)が炸裂するこの作品の中で一番印象的なのが、『抜かれるなら、度肝がいいよね』という言葉。 意外にもこの言葉はキーワードとなり、大事な場面でまたも,面白い使い方によりカタチを少し変えて登場することになる。 
 話は戻るけれど、日本人以上に日本人らしいという事実。 まさか、異国の人の口から“しきたり”や“すじ”という言葉が出てくるとは思わなかった。 日本語や文化を学ぶ人たちの凄さがよくわかる場面だ。 “大丈夫!大丈夫!”と言うさおりに対して、日本のしきたりを思って心配するトニー。まるで さおりがアメリカンでトニーが日本人に見えてしまう。 もちろん、それぞれの国々に各々のマナーはあるだろうけれど。
 異文化の違いからかどうかはわからないが、さおりを通して 私たちの“内に秘める”ところや、気配りがゆえの保守的なところなど物事の考え方がよく見えてくる。相手を傷つけまいとして、心に思ったことを言わずいるこちらと、なんでも思ったことは遠慮なく言って欲しいと願う相手。 どちらも相手を思いやっていることなのだから 大切なことなのだけれど、中々うまくいかないこともあるんだなぁと思う。 トニーとさおりとの間に出来た溝。最初は小さかった溝がしだいに広がっていく様がじわじわと伝わってくるのがなんとも切ない。
 実際、文化の違う者同士が一緒になった時、ぶつかる問題は少なくないだろうし,国際結婚が多くなってきているとは言え そう簡単なものではないだろう。 だけど、さおりの母親の言葉が観る側の胸をつかむのである。 クライマックスで明らかにされる,さおりの父親の本音が語られる,ぐっとくる場面だ。 異文化の違いだからと言ってしまいがちだけど、相手がどんな人だろうと,人と付き合うことには国境など関係なくて、お互いに認め合って,許しあい,わかちあうことなのだという、人と人との問題なのだと語る,さおり母。 さらに言えば、さおり母の語るエピソードがなんとも微笑ましく,温かい。
 この場面は、言葉や態度とは裏腹にこめられた親の愛が伝わるところでもある。トニーとの付き合いを反対したのは 楽しいことばかりではなく、現実的なことにも一対一の人間同士の付き合いにもちゃんと向き合えてなかったことを諭したかった上での、父親の娘への不器用だけど思いやりに満ちた言葉なのかもしれない。 誰かと言うことは“相手と真正面から向き合うこと”。
 さおり自身の問題を指摘したのであって、本心からの反対ではなかったのかもしれないし、トニーの人間性を認められたからこそ,さおり母から語られた父親の本音があったのかもしれない。
 共感できる場面は色々ある。 まず、最初にさおりが仕事に没頭するところ。 ずっと念願だった夢の実現が目前まで迫ってきた時の様子や、やっと夢が現実になったときの喜び。 もっともっと頑張らなきゃってさらに努力する。しかし、没頭するあまり、周りが見えなくなるということ。これがもし自分だったら…と考えてもきっとそうなってしまうかもしれないし、また,自分の好きなこと・趣味に置き換えた場合でも同じことが言えると思う。
 それから、さおりから語られるトニーにとっては、衝撃的な事実の数々。さおりの言うことに対するトニーの反応の面白さ! きっと自分の言った事に対してあんなにも大きなリアクションが返ってくるのなら、同じようにそのリアクション観たさに,色々とそういった事実をぶつけてしまいたくなるだろう。 やはり人間、返って来るリアクションの面白さを何度もかみ締めたくなるものである。
 三つ目に、アメリカでの二人の再会場面。 訪れたことない知らない土地であちらこちらへと,迷う時の不安、そしてそんな中で、やっとのことで頼れる人・会いたい人に会えたときの安堵感…自分のことのように共感できる。 トニーはどこまでも真面目で優しい!!と思う。 最初から相手に向き合っていて,いつも相手のことを考えているところ…。 生活スタイルの違う場所ではやはり家事一つやるのだって,わからないことだらけで苦労する。 けれど、自分から進んで理解に努める所などとても尊敬できる。 自分が教られなかったけれど、実は相手は自らの力で解決の糸口を見つけていた。この時のさおりの罪悪感が心と心がつながっているんじゃないかってくらい伝わった。 
 ごめん、とはハッキリ言わずとも,さおりの その涙が全てを物語っており、だからこそトニーは何も言わずにさおりを許したのだろう。
 最後に、コメディなところに触れておきたい。 実際の国際カップルの声を聞ける場面もさることながら、漫画エッセイが原作と言うことでアニメーションが見れるところが面白かった。 まず前者は、色々な国々のダーリンが登場して、それぞれのこだわりや面白い発想などが聞けるところが良かった。 国際結婚という言葉からイメージされるより多くのダーリンが登場するのがまず面白かったのである。 次に時々垣間見えるアニメーション。 実写からいきなり可愛らしいアニメになり、しかも迫力がある。 “度肝”のときの場面でのとてもナチュラルな日本語かつ渋みのあるトニーのセリフが最高。
 大きな展開がないけれど、学ぶ事や得ることは多い。 何気ない日常が描かれているから、とても親近感がわく。 春の穏やかでのどかな季節に合う素敵な作品だ。
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by jd69sparrow | 2010-04-11 21:53 | 映画タイトル た行