ダークナイト(2回目)

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<ストーリー>
 悪が善より勝るゴッサムシティを救うため,過去の自分が恐怖を抱いたコウモリを素にバットマンを誕生させ,自らがそのマスクを被るブルース・ウェイン。 バットマンの登場で悪たちは追い込まれ,その結果 鋭い牙となり彼の身に襲い掛かってくるようになった。 生身の人間であるバットマン,ブルースも限界に見えるほどそれを示す証拠が傷となって、体にしっかり刻まれている。 あくまでもバットマンは自警。 そんな彼をあざ笑うかのように、解き放たれたのがジョーカーと名乗る謎多き男だった。 ジョーカーは誰にも縛らない,己の本能で生きる獣のような男だ。 道化のようで、バットマンに匹敵する頭脳で人々を混沌へと陥れることを楽しみとし、次々と犯罪を犯す,まるで挑発するかのように。 狂っているようで頭がキレて,予測不能の動きをするジョーカーに惑わされつつも、果敢に立ち向かうバットマン。
 危機的状況に追い詰められてしまうバットマンだったが、救いの手,希望となる存在がいた。 ハービー・デント。 彼は“光の騎士”と人々に崇められる地方検事。 ブルースの志しと同じく、ゴッサムシティを救おうという表の世界のヒーローだ。 バットマンにとって身内以外では警官のゴードンとハービーだけが頼りだった。 しかし、無情にも運命は過酷な道へと彼らを誘い、悲劇をももたらす。 ジョーカーはバットマンにゲームを仕掛ける。 勝つのはどっちか。 命運を分けるコインがトスされ…

<感想>
 ジョーカーは普通の悪ではない。 しかも、滅多にいない目的を持った存在。 身元を示すものは一切持ち合わせず、ナイフと頭脳の二つの武器しか持ち合わせない男。 そのわりには上等なスーツを持っている。 気の狂った紳士…と言ったところだろうか。 悪党にしては上品な格好である。 金に執着心を持たないし、死を恐れない。 人々の恐怖心こそ彼のエネルギーなのだ。 そう考えると、様々な国々が他の国々へ恐れを持ち武器を作るのと似ている。 人の恐怖がさらなる恐怖を生み出すという点では。 いわば、恐怖が具現化したのがジョーカーという感じ。 慌てるそぶりなど一瞬たりとも見せることはなく、常に先をついている頭の回転の良さは悪にするのにはもったいないほどのものだ。 地獄へ落ちても笑い続けることだろう。
 しかし、何故魅力を感じるのだろうか。 うまくは説明できないけれど、ジョーカーというキャラクター自身が放つインパクトもさることながら、キャラクター性や行動一つ一つ,そしてその強さだろう。 ジョーカーは幾度か変装をする。 さらに、言葉でも相手を見事に欺き,また 出し抜いて目的をやり遂げる。 ナースのコスプレをして病院へ忍び込むジョーカー。 メイクでばれそうでは?と思うのだが… しかし、後姿からはわからない、振り向くまでは。 ジョーカーは常に猫背。 ナースの制服を着ているからというのもあるのだが、ガタイの良さと姿勢からその歩く姿が独特なものに見え,なんだか可愛いような面白いような感じ。 特に爆弾のスイッチを押そうとして,中々起動せず,時間差で起動するという場面が可愛かった。  また、静まり返った大都会のど真ん中で立つジョーカーの姿は前から見てもカッコいいが、後姿がなんとも言えないくらいキマッている。 人々を惑わし,それを喜ぶ姿はまさに狂気そのものなのだが 目だけはいつも真っ直ぐで真剣そのものというギャップがイイ。 
 終始、白塗りメイクの道化風のジョーカーだが、素顔が出る瞬間があるというのは噂には聞いていた。 だが、今回それを本編の中で確認することが出来なかったのだが 調べていく中でその画像を見ることが出来た。 やはり、元の顔がわからないくらい、派手のメイクに包まれた顔の本当の姿はどうしても気になるもの。見逃してしまいそうなくらい、きっと一瞬なのかもしれないが 是非探してみたいものだ。 静止画像で見る限り、道化というよりも 深い憎悪を内に秘めた感のある,冷静な表情である。 過去を探る手段がない謎の人物である。
 悪が生まれる瞬間。 正義が悪にいとも簡単にひっくり返ってしまうところは、恐ろしいものがある。 それは現実を物語ってもいる。 どんなに平和主義の人間でも、悪に染まりうるという衝撃的な真実… 真面目な人が罪を犯す…そういうことをする人間ではなかったのに…という人々へ衝撃を与える事件があるという現実だ。 ジョーカーは世の中がどんなに脆いのかを証明した、とでもいう感じ。 人の心理を読むに長けた手ごわすぎる敵。 その気になれば、バットマンの力を持って征することのできる敵だが、ほぼ確実にそれをさせない。 ジョーカーは見透かしている。 しかし、完璧ではない。 それが唯一、他人に委ねたクライマックスでのある一こまである。  彼自身が下す必要性の高いものについては、決して的を外さないのがジョーカーの得意技。 
 人々の判断に委ねた唯一の場面。 一般人と囚人たちを乗せた二隻の船。 それぞれがお互いの船を爆破するためのリモコンを手にしている。 囚人たちが無言を通すのに対し、一般人たちは“囚人は自業自得なのだから…”と口々に言う。 気持ちはわかるにしても 無情である。 そもそも人が人を殺すのは間接的であれ,なんであれ許すべきことではない。 囚人たちは何故囚人であるのかを考えれば彼らが出すべき答えはおのずと答えはわかる。 囚人たちは確かに罪を犯したが やり直す権利を持っている。 心から悔いれば、いずれ報われる日が来る…  皮肉にもあるべき決断を下したのは囚人側の方だった。 一人の囚人の勇気ある決意と行動、それはとても感動的である。「10分前にすべきだったことを,(俺が)してやる」というふうな言葉は今でも心に残っている。 人はまだ希望という可能性を持っているという素晴らしい場面だ。
 人は時として悲しい,あるいは表面上受け止めていても、内では受け入れられない現実を目の当たりにしたとき,気持ちとは裏腹な行動に出る。 思ってもいないことをしてしまうのは何故だろう。 嫉妬からくるものでもあり、気持ちが相手に見えないようにするためのマスクに過ぎない…と私は思う。それは、ブルースのみならず、レイチェルにも言えることだと私は思う。 マスクを外すことの出来る社会…それが二人をつなぐ希望だった。 しかし、悪がはこびり,ますます蔓延し続ける現実問題,その日は到底来ない。 ゴッサムシティの現実が二人の愛を阻む唯一のもの。 町の平和を守る者とその恋人が背負うリスクはあまりにもリスクが高い。ブルースはそれを痛感し,前に進むしかない。 バットマンとて悪に染まりかねない,ギリギリまで追いやられるのである。 
 人々からちやほやされることは決して望まない、むしろ憎まれ役買って出ることで彼らを安心させる…こんな方法しかなかったのかと思うとあまりにも悲しい。 ゴッサムシティの人々が希望を失わないようにと,誰に言われたわけでもなく自ら買って出るバットマンこそが希望なのに… 大切なものを失い,人々を救っても人々からは憎まれるという重い十字架を背負った,バットマン…“沈黙の守護者で、私たちを見守る監視者”…なんて心に響く言葉だろう。 結論は最後に語られるものだが、やはりズシンとくる。 目だったことは一切、せずに沈黙を守り,人々の命を守る…常にアンテナを張り,平和に乱れがないか見守る、それがバットマンであり “沈黙の騎士(ダークナイト)”なのである。  やはり深い。
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by jd69sparrow | 2010-06-07 01:13 | 映画タイトル た行