SPACE BATTLE SHIP ヤマト。

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<あらすじ>
 近未来。 地球は滅びようとしていた。 かつての美しい“青い地球”の姿はそこにはなかった。 すっかり青と緑が失われ、見渡す限り乾燥しきっている。 宇宙からの侵略者・ガミラスの放った放射能の影響により、人類の多くは命を失い、ごくわずかな人々が地球の地下へと移り住み,その日を凌いでいる状態だ。 地球防衛軍はこの危機に瀕した事態から脱するため、ある一つの希望にかけた。 それは遠くはなれた銀河系,イスカンダルからの申し出にあった。 彼らは地球へ「放射能除去装置」を提供するというメッセージを送ってきた。 そして地球防衛軍は、その装置を手に入れるために「戦艦ヤマト」の発進を決意し、乗組員を募集。 そこにやってきた一人にかつて防衛軍にいた,古代進である。 戦闘班・班長を任された古代は,ヤマトを通じてかつての仲間達,部下たちに再会。 ガミラスの脅威を,気配を感じつつも 沖田艦長が舵をとるヤマトが銀河へ向けて発進した。

<感想>
 個人的に30年以上の月日を経て,新しく生まれ変わった実写版『宇宙戦艦ヤマト』の魅力を三つ挙げると、「波動砲」、「ヤマト発進」、「戦闘シーン」である。 特別と感じるのは前者二つ。 ハリウッドの名だたるSF映画の後に観ると戦闘シーン、つまりは小型戦闘機による宇宙バトルは そう真新しいものではない。 しかし、『スターウォーズ』を絵や音により思い出させられることあって、懐かしい気分にはなった。 ちなみにワープ場面に関してもクオリティが高いのは確かなのだが“ライトスピード”だったかな? このワープも既に過去の映画で実現されているので、ここではあえて触れないことにする。
 「波動砲」。 これは戦艦ヤマトの切り札だ。 この威力の素晴らしさを観ると、「日本映画もここまできたか!」と実感する。 話は前後するけど、ヤマトが地上から初めて発進する場面もかなりの迫力。 CGやVFXがハリウッドに追いついたんだなぁと思う。 要塞と思いきや、地上から出てきたのは戦艦だったのか!…と、インパクト大。
 戦艦ヤマトが一つの会社で、乗組員がその組織だとしたら最高の職場だと私は思う。 古代はまるで新参者のように戦艦ヤマトの乗組員としてやって来て、最初のうちは みんなよそよそしい。 斉藤でさえも。 しかし、ただ一人,最初から古代を受け入れたのが 島だった。 彼は古代の幼馴染で戦友。 大げさかもしれないが島から語られる,二人の武勇伝はまるで『ALWAYS 三丁目の夕日』で子供達が漫画雑誌の冒険物語を思い描くシーンのように温かいものがあり、ほっこり感がある。 彼らの絆の秘密がちらっとだけど垣間見れる事が出来る。古代の知られざる過去を語る重要な役割を担うのも島だということに,凄く意味深いものを感じる。
 島とは逆にあったのが、真田である。 彼はいわばテクニシャン。 科学に長ける,古代の兄貴分。 真田は古代に最初冷たいのだけれど、気づけば頼れる兄貴になっている。 今までツンケンしてた相手から、いきなりの温かい言葉。 家族のいない古代にかける,さり気ない言葉は この映画の名言と言ってもいいだろう。 「俺はお前の事を弟のように思っていたぞ」という言葉だ。 こんなこと言われたら,ほろほろと泣けてしまう。 あくまで推測だが、ここが古代が「自分は一人ではない、(血がつながっていないけど)家族がこんなにもいたのだ」と実感する場面なのではないかと思う。 ヤマトの乗組員全員が、古代進にとっての家族なのだと。
 身内の不幸で辞めて現役から退き、また復活。 しかし、その過去語らず…という話の成り立ちは そう珍しくはないのだが、この古代という人物の熱さを目にすると、なんだか特別なものに感じるのは何故だろう。 彼がヤマトに乗った理由。 それが熱かった。 一つは、地球を救いたい気持ち。 そして、「ゆきかぜ」の艦長でたった一人の兄・守を見殺しにした,沖田艦長がいかなる人物かを確かめるのが最初の目的なのだ。 ここがまさに違うと思った。 そして、ちょっと「くさいな」と思いつつも、いいと思ったのが 古代がヤマトに尽くす、新たな目的が追加された事。 森雪にかつての美しい地球を見せるため、だそう。 ここに古代の成長の跡が見られる。 こうして、目的さえも進化・成長するところも見所と言ってもいいかもしれない。
 この古代が防衛軍に復帰した最初の理由が語られる場面。 沖田艦長の印象もこのわずかの合間で変化する。 主人公に感情移入した観る者としては、古代が言うように「何故、古代守を見殺しにして、沖田はノコノコと帰ってきたのか」とこの段階では凄く共感している。 しかし、沖田艦長の「生きて帰るという仕事もある」という言葉に一気にひっくり返される。 この艦長、ただものでないと。 偉大なる艦長なのだと。 口数が少ないけれど、いつも的確で人には見せないけれど内面には熱いものがある。 そう思える人物だ。 嘘までついて乗組員をはじめとする生き残った人たちに希望を持たせようという優しさが語られるくだりが とても印象に残った。
 そう珍しくはない。 だが、印象深い場面がある。 それは終盤の斉藤と真田の勇敢なる戦いだ。 真田がガミラスの中枢へ爆弾をセットし、その間をもたせるために斉藤が盾となるところである。 まず最初にその中枢を手前にしてのやりとりに注目した。 古代、森雪、真田、斉藤の四人がブラックタイガー隊に後を任せて中枢へと続く道まで到達。 そこはまるで 『ロード・オブ・ザ・リング』の一場面に登場する要塞(だっただろうか…ホビット二人に二重人格のゴブリンが登場する一こまで、主人公が召使・サムとゴブリンとの間で“信頼”を委ねるのを迷う場面だ)の一つを想像する。 そんな場所で斉藤が「よっしゃ!」って言って突っ込んでいくところがまずカッコいい。 無鉄砲であり、勇猛。 真田が作業完了後に顔をあげると一人盾になってくれていた斉藤がその完了の言葉をかけた瞬間、倒れるあの場面が今でも目に焼きついている。
 ガミラス。 “固体であり、全体”というなんとも倫理的な言葉を放つ、人間かそれ以上の頭脳を持つ謎の集団。 彼らのアジトへの突入場面。 見渡す限り、その兵隊だらけ。 大量のプレデターがいるようでもクローン兵(『スターウォーズ』)…あるいは、エージェントスミスがいるかのようでもある。 ずらーっと彼らが映し出されるのは一つの絵のようだ。 『無双』を見ているようでなんだか、ぞっとすると同時にワクワクする場面だ。 あるいは、『キングダムハーツ2』のセフィロスとの対決を目前にした大量のハートレスとの荒野の戦いの如しだ。
 そこでのアナライザーは凄く頼もしくカッコいい。 コスモゼロ機に搭載されているあたりは、R2D2そのものなのだが、自立モードでは頼れる兵士に(例えるなら、『トランスフォーマー』のバンブルビート?。 アイフォーンのようだったところから、R2D2になり,さらに戦闘ロボット(『SW』のロボット兵のごとく)になるのが)凄い。 ただ、もう少し活躍の場を広げて欲しかった。
 登場場面こそ少ないけれど、存在感を残したのは,古代守とデスラーの二人。 『SP野篇』での悪っぽい印象の後のこの役はとてもギャップのある堤さん。 既にガミラスからの攻撃で大ダメージを負った「ゆきかぜ」を盾にして欲しいという申し出の場面。 沖田を全面的に信頼し、そのために死ぬならば本能…とも言わんばかりに笑顔で幕を閉じるところが「最初っから、泣かせるじゃないか!」っていう感じだった。
 もう一人はデスラー。 オリジナルを知らない世代としては意外な事実だったのだが、声を担当する伊武さんはオリジナル放送時の“オリジナルキャスト”なのだ。 こんなにも早い段階で声優としての活躍をされていたことに驚いた。 声を聞いた途端、顔が出てくる。 それも徳川家康を演じたときの顔が。 なんて低くて渋い声なのだろう。 声だけで存在感抜群。 デスラーと言えば、最後の登場場面ではシルバーサーファーや『インビジブル』(特に焼け焦げてしまう後半場面での透明人間)を思わせる感じ。 その不気味さを考えると後者の方が近いかもしれない。
 忘れてはいけないのが、古代と森雪とのロマンスだ。 第一印象としては兄と妹という感じで、そのイメージは後半あたりまで崩れない。 森雪はクールで中々感情を表に出さない人物。 しかし。物語は彼女のアップからスタートする。 戦闘機に乗る森雪の映像は絵のようだ。 アップにしてから一気にひくという絵の見せ方をそこで物語への興味も加速する。 そんな彼女の印象に残る場面は 古代が乗り込むコスモゼロへのキス・シーン。 古代を見送る彼女は 最初では考えられないほど少女そのもの。 それはルフィやナミが見せる笑顔に似ている。 ルフィが「シシシッ」って笑うかのよう。
 それから、先に触れた『SW』を思い出される森雪たちの最初の戦闘シーンも懐かしさも感じるけれど、もう一つ、懐かしさを感じるところがある。 それは…。 ヤマトにしかり、その前に沖田艦長が乗ってた戦艦にも言えるのだが、戦隊モノの巨大な敵と戦うためのロボットのコックピットを思わせる,内外から見た第一艦橋にもテンションあがる。
 沖田艦長。 一番オリジナルのイメージに近いと言えるであろう。 その貫禄はオビワン=ケノービと位置づけられるのも納得。 『SW』のエピソード4以降のイメージと言っていいだろう。 しかし、彼の隣に古代が並ぶとクワイ・ガンジンと若き日のオビワンを見ているかのようにも思える。
 忘れ難い衝撃。 それはイスカンダル星の姿とその真実にある。 まるで『猿の惑星』でのラスト場面くらいの衝撃。 ガミラスの星と表裏一体。 その姿は地球の過去と現在を表したかのようである。このイスカンダルとガミラスに隠された真実もしかりだ。
 話はそれるが、ちょっと惜しいと思った。 一話簡潔にしてしまうのはあまりにも惜しい。 日本の映画界において 中々足を踏み入れられることのなかったSF分野。 ここまでの映像と作品の,ハリウッドに匹敵する,クオリティがあるのならば せめて 二部作以上にして欲しかった。 理想としては三部作。 だから、もう少し伸ばせば内容もより,濃くなるというもの。 予算などの問題ありきで今に至るかもわからないが。  しかし、映像技術は特筆すべきレベルだ。 山崎監督は日本のスピルバーグ(もしくは、G・ルーカス)のようだ。 テレビゲームにしたら面白そう…。
 この超大作は監督と主演をはじめとするクルー全員が築き上げたのだと言う監督の言葉を考えると凄いなぁと思う。というのも、キャストと監督とで追加した,築き上げた場面があるからだ(※パンフ参照)。
 全体としてのイメージは『アルマゲドン』+『スターウォーズ』で、主人公の行く末は『アルマゲドン』でのベン・アフレックのポジションといったところだろうか。 だけど、完全なる二番煎じではない。 映画によってはたまにあることなのだが、作品の裏話をパンフレットなどを通し、知っていくうちにその作品の魅力に気付き、映画を観た直後には感じなかった面白さが後からわかるパターンにあてはまるだろう。  困難へのチャレンジ精神で『SBヤマト』は出来ている…という作り手の言葉を聞くといかに熱意がこもった作品なんだなぁと言うのがよくわかるし、実際そう見えてくる。
 この映画が私たちに語ることは多い。 その中に記憶に色濃く残っているのが、人々が求める「保証」。 これは、古代が沖田へ「放射能所装置」について追及する場面や藤堂がマスコミの質問に応じる場面にもある。確かに、人は自分たちを守るため、保護するため、さらに恐怖・最悪な事態をさけるために「保証」を求めたがる。 だけど、この世に「保証」されたものなど存在しないのだ(藤堂もそう言っていたかもしれない)。 そしてクルーたちのモチベーションを保つため,また希望のために「保証」をウソをついてまで掲示したという事実が語られるのが頭に残っている。 
 しつこいようだが、続編が欲しかった。 そして、もうちょっと掘り下げて欲しいと思った。 ヤマトの乗組員たちの絆を濃厚に描くためにも。  しかし、中々の面白さ。

※満足度:★★★★(4/5点)
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by jd69sparrow | 2010-12-15 17:25 | 映画タイトル さ行