ツーリスト

2011.3.5 Sat

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<あらすじ>
 イタリア。 一人の美女がカフェで,一息ついていた。 事件を追う刑事たちの監視下、その美女,エリーズのもとに一通の手紙が届けられる。 その手紙の差出人は 警察が追う指名手配犯アレクサンダー・ピアースだった。 その指示に従い、列車に乗ったエリーズは,手紙に書かれたとおりの人物像の男に接触する。 彼の名はフランク。 数学の教師でごく平凡な人物である。 一度は別れる二人だが、ヴェネチアで再会し,行動を共にするが、フランクは見に覚えのない追っ手から追われる羽目となり、エリーズに関われば関わるほど危険がつきまとう。 それでもフランクはエリーズへの気持ちが冷めることなかった。 エリーズもまた,かつての恋人ピアースとフランクとの間で気持ちが揺らいでいた。 手紙で指示をしてくるばかりのピアースは果たして現れるのか。 ロマンティック、コメディ、スリル、アクションがブレンドされたエンタテインメントである。

<感想>※ネタバレにご注意!※
 ミステリアスな男女のロマンティック・アクション。 エリーズのミステリアスさは冒頭から既に漂っていたけれど、フランクは ほぼ平凡な雰囲気を劇中出しているけれど、ジョニーの「平凡に見られる人ほど、奇妙な人間であることが多い」というように、実は謎めいた人物なのだ。 作品へのコメントにもあるように 個性派で有名な俳優が“ただ”平凡な役を演じるのには“何か”あるというのは 大いに納得である。 
 ミステリアスとは相反するようだが、コメディというスパイスは欠かせない。 メインがアクションやロマンティックであっても,コミカルな場面というのは印象に残りやすいものである。 その一例を5ヶ所あげてみたいと思う。
 まず、禁煙中であろうフランクが目の前でタバコ吸う刑事に誘惑される場面だ。 そもそも この禁煙はピアースである証拠を隠すためと考えられるのだが、電子タバコを吸うというところが まだ未練があるのか可愛い。俳優が映画の中でタバコを吸うというのは男らしくカッコよく映る演出のように思うのだが、そうかと思ってみたら「実は電子タバコでした」ということ…というか、電子タバコが登場するところが面白かった。 これはピアースからして わざとなのか、素なのか。 この刑事との場面でのフランクの目は 目の前で餌をお預けされている,犬のようで可愛らしく、「誘惑されちゃってます」感がなんともユーモラス。  ここで負けてしまったのか、それとも必要性が無くなったのか、後半の場面でいつの間にか 本物のタバコを吸っていた気がする。 個人的には前者に思えたので この場面を見て「あぁ、誘惑に負けちゃったんだな」と思った。 
 次に、フランクのパジャマ姿の逃走劇だ。 ここでポイントなのがジャック・スパロウ時から引き継がれる乙女走りである。 「乙女走り」+「パジャマ姿」という可愛らしさ倍増が最高。 その前に、旅行で律儀にキッチリ折りたたまれたパジャマを用意しているところが面白く、かしこまりながら パジャマを取り出すという短いカットも面白い。
 最後に、舞台はイタリア…イタリアの人に向けてフランクは、何故かスペイン語を話したり、「ボンジョルノ」を「ボン・ジョビ!」といい間違える場面がいくつかある。 話の設定上、これは考えられた言葉なのか、ただのいい間違えなのか とても謎である。 いい間違え関してと、もう一つどこかで聞こえたのが「アメリカ人め!」というイタリアの男たちの捨て台詞もまた面白いところ。 イタリアの人から見たら、言動ですぐアメリカの人だとすぐわかってしまうものなのだろうか。 彼らの捨て台詞から読み取れたのは、アメリカ人に対してのイメージが「適当」で「騒ぎを立てるのが好き」だということだ(個人的な見解だが)。 コメディドラマでも見ているかのような場面である。
 考えてみると、この作品ではコメディと可愛らしさというのがイコールではないだろうか。 コメディとして面白いと感じた場面にいるフランクはいつも可愛い。 どの作品にもあるかもしれないけれど、役者の方々のアイディアがところどころにあるそうで、驚いたのがパジャマの逃走劇の「パジャマ」である設定がそうして生まれたアイディアであるということだ。 作品を盛り上げるのは、演出家だけでなく、役者をふくめて その作品に携わる人たち全員なのだということを改めて実感した。
 種明かしとなるその瞬間。 フランクに対しての愛だけでなく、ピアースへの愛も捨てきれないと言う,エリーズにフランクが「それを解決することができる」というふうな言葉をかけるときがかっこいい。 なんとなく、答えが途中からわかっていた気がするのだが 最後のその言葉を聞くときまでは ピアースの謎はわからなかった。 悪の親玉の問いかけに対する,フランクの答えがあまりに無理があり,とっさの嘘にしか思えなかっただけに衝撃である。 しかし、答えをいざ目の前して,謎が解明されてから思い返し見ると ヒントがあちらこちらにあったんだなぁと振り返ることが出来る。 
 舞踏会の日がその一つと言えるだろう。 パジャマ姿の逃走劇の場面からは想像できないくらいのセクシーなタキシード姿で登場する姿は 既にピアースに戻っていたと言える。 顔は違くてもその時のオーラや雰囲気、たたずまいがピアースの人物像なのだと思う。 
 さらにヒントと思われるところをもう一つあげるのならば、最初にエリーズが手にする手紙にある。 ピアースが自分の身代わりをする人物を「自分と似た体格」と指定してきた。 それは その人物を自分に見せるためでもあったが、エリーズにフランクに化けた自分を選ばせ、彼女を守るためだと思うのは私だけであろうか。 こうして考えてみるとやはりフランクとして現れたピアースの視点を想像したくなるのも納得である。
 エリーズが身につけている指輪はローマの神 Janusをかたどったものらしい。 母親から この指輪に関して「愛する人の二つの面,良いところと悪いところ、過去と現在(未来)を受け入れなさい」というような教えを受けている。 これは そっくりそのまま ピアースに当てはまる。 終盤、クライマックスで偶然か否か,ピアースのアパートメントにも同じJanusがある。 ここで出てくるのは壁画のようなもので、それが物語の鍵であり、それを決定付けていると言えるだろう。 ピアースとエリーズは同じ神を信じていたということになり、愛の絆の強さなのだと思う。 そしてJanusはエリーズにとって守り神でもあると言っても過言ではない。 だからこそ、彼女はギャングのボスに追い詰められた時、盗まれたお金のありかをその壁画?だととっさに示したのだろうか。
 「The perfect trip,the perfect Trap(The Tourist) 華麗な旅人には 危険な謎がある」。この言葉が指し示すのは、エリーズのことのようで 実はフランクのことなのだろうか。つまり、エリーズはフェイクで、フランクという存在もまたフェイク。 エリーズという「謎の美女」のインパクトが大きくてフランクから注意がそらされる第一印象。 それは最後の最後まで続き、覆されるのである。 結末を見た後、事件の鍵となるのが実はフランクであるという事実に納得できる。
 さらに「君とキスしたことを僕は後悔していない」という言葉には裏があり、フランクが遠まわしに自分がピアースであること告白しているようにも取れると思うのは気のせいだろうか。
 そして、見事に愛する人も欺いたピアース。 エリーズがフランクに惹かれたのは、(彼女が気が付かずとも)彼がピアースだったからかもしれない。  
 ひとクセあるストーリーに、ロマンティックな二人とそんな二人にふさわしいヴェネチアという最高の舞台… 最後にそれまで見ていたものが180度変わり、観る側も欺かれるのという,なんとも見ごたえのある作品なのだろう。
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by jd69sparrow | 2011-10-15 00:17 | 映画タイトル た行