SP 革命篇

2011年3月15日(火)

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<あらすじ>
 雄翔会。 東大にある政治に関する部活の同士たちは汚職にまみれた政権を建て直すべく、政治家・伊達國雄と警護課第四係・係長の尾形総一郎を中心に“革命”という“野望”を抱き,ある計画を企てていた。 その「野望」が明らかになったのが、『野望篇』である。 
 それから二ヵ月後、ついに尾形の言う,“大儀”の「革命」が実行された。 彼らの狙いはただ一つ。 現・政権の崩壊と浅田総理への復讐。 井上、笹本、山本、石田の四人も“革命実行の舞台”にいた。 四人は尾形への信頼を抱きつつも、革命実行犯である尾形に戸惑いを感じつつも,今まさに起こる“革命”の狙いを,尾形を止めるべく、裏切り者のSPたちを始めとするテロリスト集団たちと戦う。

<感想>※ネタバレ注意!
 「余韻を残す締めくくり」…という作り手の言葉とおり、その結末は謎を残しつつも,爽快かつカリスマ性のある終わり方となっている。 まだ、その先がどう展開していくのが非常に気になるけれど、スッキリした完成度の高い作品であると象徴している。 どこにもない…真似できない、とてもクリエイティブな映画である。
 テロリスト側の狙いはいつも共感できる内容でなくてはならない。 彼らの真の目的や「やり方」は道をふみ外しているけれど、そこで語られることは真髄をついている。 あまりにリアリティがあり、説得力がある。 そして それを強調したのが、自民党から民主党への政権交代以降の日本の政治を反映したストーリー演出である。 「国の基盤を揺るがしているのは、お前たちだ」と言うテロリスト側の言葉に否定が出来ないというのも悲しいものがあるし、国のシステムを風刺するような場面が一瞬あり,そちらもまた 色々と考えさせられる。 また、「革命」と言いつつも、一人を除いては 結局 欲にまみれており,同じ歴史を繰り返そうとしたものだということは もっと悲しい事実である。
 尾形はテロリスト側にいるけれど、終始その仲間達とは違う“狙い”が別にあることを匂わせる感じがした。 復讐と革命を誓いつつもどこかで“迷い”があって 善を持っていたと思わせる。 井上が「尾形さんは自分たちに止めて欲しい」のだと言うが、その言葉のリアルさがそれを物語っていると思うのだ。 井上と三人の仲間達が彼らのリーダーが自分たちを裏切るような行動に走っても,尾形への恩は変わらず持ち続け,信頼も捨てきれずいることもそう受け取れる要因と言えるだろう。 しかし、井上のその言葉に至った“思い”の経緯は明確ではない…けれど、一つにそれ(尾形への恩)があるというのは確かだ。
 緻密に練られた濃厚な物語を背景に迫力とスピードのあるアクションが『SP』の特徴であり、一番の見所である。 まず、注目すべきは新人SPたちとの戦いだ。 これは井上達が“異変”に気付いてから最初の戦いとなるわけだが,彼らの強さを良い意味で見せ付ける,また象徴する場面である。 チーム対抗戦。 リアルなストーリーを描くアクション映画の中で,ハリウッドを含めても,最高峰だと言っても過言ではないだろう。 女性同士の一騎打ちはそう珍しくもなくなりつつあるけれど,やはり迫力がある。 雌のライオン同士の戦いという感じだ。 そして最も今回印象的なのは クライマックスで四人が議会へ突入する場面だ。 音(アクションの音)よりも、映像でその凄さが表現されているのだが、彼らが突入した瞬間から釘付けとなる。 井上達の強さを知りつつも、この瞬間の直前までは テロリスト側が優勢でそのまま続くのではとさえ思うほどだったけれど、それが一気に逆転し,テロリストたちの陰謀が一気に崩れ落ちるのは 見所である。 まるでドミノを倒すがごとし。 テロリスト側が優勢だとか説得力を感じたのは、それだけこの映画の世界にはまっていたという証拠と言えるだろう。 物理的に難しいとかそういうツッコミが入るかもわからないけれど、個人的にはそんなことなど一切感じられなかった。 「自分が映画の世界にいるようだ」とはこのことで、リアルと作りこまれたストーリーがあってこそである。
 銃を使ったアクションや格闘技を駆使して攻撃するアクションも見所だけど、受身も凄いのがこの作品の特徴だと思う。 主人公たちが手ごわい相手に幾度となく,吹っ飛ばされて壁やガラスに激突する場面は、全体を通してあるけれど、とても迫力があり,スタントとしても少しずれたら怪我もしかねないくらいのものをクリアしているのだから凄い。 何回かあるテロリストたちとのアクションの中で死闘と言えるであろう場面は 作品の解説の中でも強調されている,井上と中里との戦い(ちなみに中里は尾形率いるテロリストの一人で部下)。 SPのアクションと不良のアクションという感じ。 これでもか!と言わんばかりにパワーで押してくる敵に対抗し,荒さのない しなやかな動きで反撃をする井上のカッコ良さったらない。 ノースタントで挑む主演俳優は,前回の『野望篇』でも言ったかもわからないけれど,アイドルではなく完全にアクション俳優であり,実力派の役者とも言える。 言われたとおりのアクションをこなすだけでなく、ストーリーの進行、それ以前に『SP』を始動させた一人だからである。 だから演者であり,製作者とと言ってもいいくらいだろう。
 話は戻して。 中里とのアクションで井上達のアクションが際立つ。 実際のSPがマルタイと呼ばれる人が危機にさらされるときに,どのような動きを見せるのかはわからないが 私たちが想像しがちなスキルが必要というわけではないらしい。 とは言え、二種類のアクションがぶつかり合う,この場面から目が離せない。 おそらくは現実のSPはしないかもしれないが、井上の壁を使ってのアクションは前回に増してカッコいい。 重力を逆らうようにして,壁を走ったり,宙返り(壁をつたっての)の後の一撃は最も迫力がある。 『筋肉番付』でも見ているかのようなアクションの数々である。 最後の方までやられっぱなしだったところ、中盤から終盤にかけて,プロレス技みたいな攻撃をする井上の姿は忘れ難い。いい意味で。
 井上と尾形の特別なつながり。 二人の間には奇妙なものがあり、そしてどこか絆の強さを感じる。 彼らはSPになる以前に一つのある,過去でつながっている。 「兄弟のような関係」と表されるのも 説得力がある。ある一人の男の狂言により,悲劇に見舞われた二人だが 彼らをそれぞれ別々の道に歩かせた「違い」なんなのか。尾形の復讐心はその時から始まるけれど、井上にあったのは悲しみや孤独。 井上が尾形と同じ路線を歩かなかったのは、やはり尾形への恩が大きいかもしれないし、その他にも理由はあるだろう。
 ただ、尾形と,映画で初登場した伊達という男が本物の兄弟という設定だということは,鑑賞後 解説を読むまではわからなかったが 言われて見れば納得。 さらに『野望篇』まで遡れば,なおさらだろう。 
 スリル満点のストーリー展開の中にも,一息ポイントがある。 それは『SP』お約束シーン。 笹本が「ツッコむのも飽きた
むのも飽きた(疲れた?)」と言う,井上の手錠忘れ。 クールで一匹狼的な井上,唯一のお茶目?な一面である。 悪く言えば、抜けているところだけど…何故忘れるのだろう。 でも『SP』において必要な件である。 もう一つは、笹本と山本の夫婦漫才。 「突入」の少し前、「もっとたくさん殴られたかった」という山本に「安心しろ。あとで いっぱい殴ってやる」と返すのが面白い。 そして実際、殴られるところも 漫画の一こまを見るようである。 将来的にいい夫婦になりそうと思わせる,最後の最後での このお約束場面は見逃すことなく,観ておこう。
 最後に。 井上と尾形の一騎打ち。 屋内外で二度三度と繰り広げられる。 まず、井上が持つ銃の銃口を尾形がその額に押し付ける場面。 尾形の狂気に満ちた顔が忘れられない。 そして最後の「決着の瞬間」には良い意味で騙された。 尾形が自分の頭に銃を向けた瞬間、鳴り響いた銃撃、倒れこむ尾形…彼が最期を迎えたと思いきや,それより速く井上の銃の一撃が尾形の銃を握る手に当たっていたと気付くのに、少し時間がかかってしまった。 考えてみたら、銃が鳴った瞬間の尾形の驚きに満ちた表情がそれを物語っていたのだが。 素の感情を尾形が見せたのは,少なくとも映画版ではここが初めてだろう。
 いろいろな面から考えて、総合的に,最高に面白かった。 オリジナルというのだから凄い。 ラスト、治ったかにも思えた井上のシンクロが再び起こることで新たな『SP』の発展の可能性を感じるし、広い場所の中心で一人,立ち尽くす井上。 そこからまるで『マトリックス』の世界に一瞬で変わったかのようにCGで場面が展開するところ,つまり、ビジュアルがロケ場面の映像とCGとがエンドロールに入る直前に変わったところが綺麗だった。 その一瞬が この映画の面白さが決定付けられたと言っても過言ではない。
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by jd69sparrow | 2011-10-25 00:05 | 映画タイトル あ行