蝉しぐれ

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 江戸時代末期、二人の幼馴染がいた。文四郎とふく、二人は少年少女時代から一緒にいて、どこか惹かれあっていた。 しかし、文四郎には悲しい出来事が重なった。父親に課せられた罰、ふくとの別れ。 彼は二十年もの間、今は身分も上で遠い存在となった,ふくへの想いを胸に秘めていた。 長い長い年月の間ただひたすら一人の女性を思い続けた彼のまっすぐさがとても素敵だなと思った。 そして、ふくへの想いは生涯消えることなく、逆にふくにとっても文四郎への想いは同じだったのではないだろうか。 というのは「この指(の傷)覚えていますか」というふくのセリフの後、「忘れようとも忘れ果てようとも忘れることではございませぬ」とい文四郎の言葉になんとなく二人の想いが通じ合っている感じがしたからだ。これはお互いの,一種の意思や想いの確認であったように受け止められる。 もう届かぬ人、結ばれることも許されることもないのであった。
 二人の再会、生きることの尊さを存分に味わえる作品だ。 物語の中に時代劇によく見られる大きな戦いはない、しかし見ていてとてもなごむし、飽きない。 本当にこの時代にこの風景があり、本当にこういうことがあったのかもしれないとさえ思う。 「忘れかけていた日本人の心」。ここには本当に日本人が本来持っていたのではないかという「日本人の心の美しさ」がある。日本で歴史的にも親しまれている日本の家屋にはかかせない畳をイメージさせた。 こういう心の美、日本の緑を忘れてはならない。 フィクションであるのにまるで歴史物語の雰囲気がただよっていて,夏の日に木陰で冷たい緑茶でも飲んでいる気分だ。 
 夏、緑、時代ものという三つのキーワードが物語を美しくおもしろいものにさせる。
 藤沢周平原作、市川染五郎・木村佳乃主演で,他に緒形拳、ふかわりょうなどがメインにいて、バックには今田耕司、柄本明、大滝秀治などがいる。 ふかわりょう、今田耕司という芸人が今回参加しているが見事に映画の作品の中に溶け込んでいて自然。 主人公の少年少女時代を演じた石田卓也、佐津川愛美も含め,みなが「役者」だ。これははっきりと言える。
 文四郎とふくが交わす最後の会話、そして子供時代二人が見た花火のシーンがとても印象深い。 文四郎は武士として男になっていく、ふくは女性らしく おしとやかに美しくなっていく。 文四郎はつつましい生活の中、父親を誇りにし、強くたくましくなる。
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by jd69sparrow | 2006-08-08 18:30 | 映画タイトル さ行