パフューム ある人殺しの物語

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 「香り」は形を残さない。 けれど封じ込めることができる。 空気に漂う香りはひと時の幸せを運び空気の中に消えてしまう。 かくしてその幸せをいつでも好きなときに堪能するため、またこの“美”を残すために香水はあると言っても過言ではない。 人はその芸術の美しさに吸い寄せられ,時としてかつてないほどの「愛」を実感し味わう。 それが「パフューム」の中にある、まるで香りとともにそこに神秘的な魂となりを作り出せれ宿り閉じめられる,“香水”。 これは人間の中にある温かさに美しき香りと共存したもの。 共存、人々は香り囲まれて生きている。 香水は臭いを単に消すためにあらず、自分を演出するアイテムのである。 常に時代はそんな香りを求めている。
 この映画は人とは違う特別な臭覚を持って生まれてきた男の物語。 その男は「究極の香り」を求めるために手段を選ばないが優れた臭覚ゆえにか調香師は人々に愛と神々しさを感じさせる一つの香水を完成させる。 それは主人公にとって忘れることのできない香りを追求するもの。 
 パリで生まれたグルヌイユは一人孤独の中で生きていた。 彼はぬくもりを感じることなく時をへだてやがて彼は「香り」と出会う。 幼き頃から臭いにこだわり続けてきたグルヌイユにとって運命的な出会いが訪れたのだ。 その香りを忘れることのできない彼はその香りをつかまえることを強く望むようになり,そしてその手段ともなる香水にめぐり合うのである。 調香師としての才能は抜群であった。 次から次へと香りを生み出すことが彼には造作のないことだった。 しかし本当に追い求める香りというのはそう簡単に作り出せるものではない。 やがて彼は自分の追い求める香りを手に入れるために驚くべき,また恐るべき方法で持ってそれをえるための道のりを歩み始めるのである。 
 とても衝撃的なことの連続の「パフューム」、これは冒頭のシーンもさることながら最後まで続く。 人の欲望は時に自らを押しつぶしてしまう力を持っている。 そんな考えを強く感じさせたのだ。 主人公は自らの希望をかなねるために異常なまでの行動をいとわず着実にその希望を果たすための課題を進めていく。 しかしそのためにグルヌイユは自分という存在と自分にとって本当に必要なものをえることができない、この物語は恐ろしき殺人者の物語であって、悲しい運命を悟る男の物語なのだ。 調香師としての優れた才能を持っていても自分から心から願うことを実現させることはできないというのはなんとも皮肉なものだろう。 彼の心には孤独という悲しきものが影を落としていたのだ。 グルヌイユはずっとどこかで人に愛され愛したいと願っていたのだろう。 それが彼の選ぶ選択肢に表れていると思う。
 グルヌイユが築き上げてきた、また心から求め作り上げた香りとはどんなものなのだろうか。映画を見ながらそれを観るものは想像を広げていくことだろう。 そしてその香りとは人それぞれによって違うものだと思う。 それぞれが求める香りはその人によって違う。 そうして香りを想像するのはとてもおもしろいものであろう。 映画を見ていてスクリーンから美しい香りが空気にのって運ばれていくようだった。
 香りという名の芸術、調香師の悲しき生涯の“しらべ”の物語。
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by jd69sparrow | 2007-04-03 03:08 | 映画タイトル は行