キサラギ

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 五人の男たちによるワン・シチュエーション映画。 物語はどこかにある一室で始まり終わる。しかし決して飽きさせないストーリー展開である。 なぜなら一つの狭い空間でありながら登場人物たちには常に動きがあり、次々と展開が変わっていくからである。 これはコメディでありサスペンスなのだ。 一人一人に物語を魅力的に演出するそれぞれの役割がある。 互いが見ず知らずで、物語が進むにつれ,新たな意外な真実が積み重なっていく。 その事実の数々が彼らの目の前にある問題を解く鍵となっている。 物語は彼らの愛するアイドルの事件を軸に動いている。
 一年前、一人のアイドルが自らの命をたったという事件が報じられた。 彼女の名前は「如月みき」。 それから一年がたった現在,彼女の一周忌迎え,その思いを語るために五人のファンが一堂に会した。 インターネットのファンサイトを通じて知り合った五人の人物。 家元、スネーク、オダ・ユージ、安男、いちご娘である。 主催者は家元。 彼の呼びかけで集まったのだ。 如月みきへの思いを語り,盛り上がる五人であったがやがて一つの疑問にたどり着く。 それは如月みきの死。 彼女の死には不可解な点が多かった。 そして彼らの推理が始まった。 何故,彼女は命をたたなければならなかったのか。 五人の持つそれぞれの情報源をもとに事件の真相をあばいていく。
 如月みきの事件にも謎は多かったが,五人にも謎が多かった。 それはそもそもインターネットの書き込みでしかお互いを知らず,ましてや素性だって知らない。 事実が一つ明らかになるたびに驚きがある。 この映画は製作者たちが語るように「人は未知である」ということが一つのテーマなので何があっても,何がどこでどうつながっているかなんて驚くに値しないなのだ。
 人は第一印象でイメージを固めてしまいがちだがそれは100%その人につながるとは限らないし、ある一人の役者の映画やドラマを見尽くしてその人について知り尽くしているつもりでもそれはその人の一部分でしかない。 人が発揮する能力というのがその人の一部分であり自身ですら知らない自分があるというように人が自分自身を知り尽くすことも、他人対して知り尽くすことも中々できることではないし、もし仮にそのようなことがあるとすればそれは奇跡としか言いようがない。 
 しかし、全てが明らかではなく五人が五人とも謎があるからこそおもしろいのであり、その謎がひとつ明らかになると見方が変わるし,この映画の見方も変わる。 ここに出てくる登場人物たちだけでなくこの映画じたいが一言で言い表すことはできないし、イメージや印象は一つではない。 だからここで記す作品の魅力も映画「キサラギ」の魅力の一つでしかない。 よってジャンルがなんであるとか,枠にくくるということも皆無である。 ドラマあり、笑いあり、サスペンスあり… そして一言で語りつくせないおもしろさ・・・。
 今まで映画は全体,つまりストーリーや画面を全部をあわせて見ていて,映画を作る要素を個々で見たことはなかったがこの作品を通し,脚本のおもしろさを知り,そこで初めて個々で作品のおもしろさを実感できた。 よく出演者のインタビューで「なぜその作品に出演しようと思ったか」という質問があり、その答えの多くが「脚本がよかったから」というように脚本は作品のおもしろさを左右するといっても過言ではないくらい重要なものであるのに今、ようやっと実感できたというのは映画ファンとしては恥ずかしい。 
 セリフの中にはいろいろなネタがぎっしりつまっていて,そのネタを知っているとなおおもしろい。 だから登場人物の行動はさることながらその言葉にも笑いを誘うものがある。

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by jd69sparrow | 2007-08-09 17:29 | 映画タイトル か行