ミス・ポター

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 1900年代初期。 世界的に有名なウサギが産声をあげた。 その生みの親はビアトリクス・ポター、「ピーター・ラビット」をはじめとする数々の動物を主人公にした絵本を世に送り出した人物である。 舞台はイギリス。 この頃はまだ女性が自由に世の中を動きまわれなかった時代で、それ以前の文化の名残りがまだ強く残っていたのである。 少し前に映画化された「プライドと偏見」とそう変わらない時代背景なのである。 月日で換算すれば間は長いのだが、「プライドと偏見」で主人公エリザベスが生きてきた世界とほぼ同じなのである、しかし時は20世紀。 時代が変わろうとしていた頃で、物語が進むにつれ時代の姿は少しずつ変化していくが、女性の生き方はビアトリクスが生きた時代も長く続いたようだ。 女性はほとんどまともに働くことが叶わず、母親の決めた,自分の身分に合う相手と結婚しなければならないという現状は「プライドと偏見」の時代とまるで変わらない、つまり女性は窮屈で限られた空間の中で暮らしていたということになる。 そんな時代の中で、現代的な考えを持つビアトリクスは“行動”に出た、それは当時では考えられないことだろう。 身分違いの相手と恋愛をするだけでなく、仕事を手にしたのだから。 長い間、“一人”の生活を送り続けてきた彼女に訪れた一つの“運命的な出会い”。それがこの物語の重要なキーワード。 女性にとって厳しい社会を強く生きた女性、それがビアトリクス・ポターである。
 当時のイギリスでは女性が職を持つということは中々困難なものだった。 それゆえ、早くから絵を描くことに興味をいだいていたビアトリクスは簡単には彼女の“友達”を理解してもらうことはできなかった。 しかし、そんな彼女にチャンスがやってきた。 原稿を手に訪れた出版社,ウォーン社を経営する兄弟の末の弟を通して,ビアトリクスはようやく仕事を手にするのだ。 彼女についた編集者はノーマン・ウォーン、彼はビアトリクスとの仕事が彼にとって編集者としての初めて仕事だった。 この出会いがビアトリクスの未来を切り開くこととなった。 彼女は様々な出会いを重ね、彼女自身の持つ想像力(インスピレーション)で次々と愛らしい動物たちが生まれ、子供たちに届けられるようになる。 彼女を成功に導いたのは、(くどいようだが)“出会い”なのだ。 彼女が経験した“出会い”が一つでも欠けたら今とは違っていたことだろう。 この物語は「ピーター・ラビット」ではなく,ビアトリクス・ポターの半生をつづった物語である。
 人生をつづるというとドキュメンタリーとか固いイメージができるかもしれない、実際はファンタジーやラブストーリー、そしてドラマがそれぞれ入り混じったものなのである。 ビアトリクスが描く動物たち、それはみな,彼女の友達。 彼らはまるで生きているかのように絵の世界の中で生き,動き回る。 その世界がとてもファンタジー。動き・表情、どれも生き生きしている。 
 ビアトリクスは動物たちと彼らを取り巻く自然を愛した。 その愛情は深く、愛情は形へと変わったのである。 それはイギリスで大変美しいとされる自然である。 彼女はたとえ,目の前に大きな成功があっても決して欲におぼれることなく,それらを自分のためにではなく人・自然のために使ったのだ。 今でも彼女の描いた物語のインスピレーションが得られた思われる場所や、彼女自身に直接つながる緑豊かな場所は残されているとか。
 話で聞くと、彼女の描く物語は子ども向けであるのだが物語の随所には機転の利いた場所があり、それはきっと大人でも十分に楽しめる仕掛けであると思う。
 イギリスから発進したビアトリクス・ポターが生み出したキャラクターたち、世界的にそれらが広まり,日本でも絵本が出版されたり大きな反響が起こる。 私事であるが、幼い頃はこの「ピーター・ラビットのものがたり」の世界などビアトリクスの描く物語をよく聞かされ,また読み返したりととても身近な存在だったのだ。 まさにこの物語で育ったと言っても過言ではない。 ウサギたちがかわいい服を身にまとう、けれどそれは不自然ではなくて,むしろ愛らしい。
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by jd69sparrow | 2007-09-16 23:52 | 映画タイトル ま行