少年メリケンサック

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<イントロダクション>
 パンクミュージックとは、衝動と魂。 音楽に衝動と魂を載せて…というか、自分の中にこみ上げる思いを,力の限りぶつける。 気持ちをそのまま歌で表現する。 言葉よりも“歌う”ことで、“叫ぶ”ことで。 この思いを理解して欲しいと観客に訴えるかのように。 そんな、パンクへの印象を受ける映画である。 
 パンクという言葉を知っていても実際、どんな音楽かを知っているかどうか。 ロックは長く愛され,世代に関係なく知られていて,知らぬ者はいないのではないかと思う。 パンクの復活と“少年メリケンサック”の復活の物語。 主人公ににとっては嫌いで、避けたいはずなのに何故か引き込まれるところがあり、はまっていく話。

<あらすじ>
 かんなは音楽会社に勤める契約社員。 仕事の成果が中々あげられぬまま,契約期間も切れようとしていた。 そんながけっぷちのかんなは最後の賭け,頼み綱となろうパンクバンドを発見する。 “少年メリケンサック”である。 彼らの専門はパンクだが、かんなはパンクを知らずに動画サイトで見つけた“少年メリケンサック”を社長の時田に今度こそと言わんばかりに売り込む。 歌もバンドも決してうまいとは言えないが、ベースのアキオはかなりのイケメンであることに,かんなは惹かれた。 そして、社長から返って来たのはなんとゴーサイン。 “少年メリケンサック”のメンバーに声をかけ,全国ツアーとアルバム一枚を作ることが、かんなの仕事であり、使命となった。 が、しかし。 かんなは大きな勘違いをしていたことを思い知らされる。 それはアキオを訪れたときである。 若いイケメンではなく、かんながあったその人は中年オッサンだったのだ。 目を疑うかんなだったが、かんなが見た動画をその人に見せると、25年前の自分だと言う。 しかも、他のメンバーたちを集めるも当時の面影を残さない,飲んだくれのベーシストもいれば,言葉もろくに話せないボーカル…紛れもない現実であり,事実であった。
 とんでもないミスをし、焦るかんなの思いとは裏腹に動画の中の少年メリケンサックは今、どんどん注目を集め,10万にも及ぶ人々の目に映っている。 そして全国ツアーまで決まっていてあとに引けない、状況に立たされたかんなは“25年前を越える”というアキオの言葉を信じ、全国ツアーを敢行する。

以下、ネタばれ注意です。



<感想>
 ベースのアキオ、ギターのハルオ、ドラムのヤング、ボーカルのジミーの四人からなる“少年メリケンサック”。 アキオとハルオは兄弟で常に中が悪かった。 彼らの仲の悪さにより,少年メリケンサックは25年前に解散し、ジミーは言葉もろくに話せず,またまともに歩くこともままならないという今に至る。 そもそも兄弟の仲の悪い原因は兄アキオの荒い性格。 かつてハルオにギターを教えたアキオ、先に音楽を始めた立場として(自信もあり,)自分よりも才能を認められていく、弟を見るとおもしろくない。 その嫉妬心が弟をどん底に突き落としてしまう。 彼らが不仲なのも無理がない。 
 25年ものブランクが空き、バンドを再結成させることには前向きでも,いい加減。 まるで寝起きのような彼らを呼び覚ましたのは意外にも,かんな。 少年メリケンサックのメンバーが車なら,かんなはエンジンなのである。 中年のオッサンたちに囲まれた彼女は彼らのだらしなさや、ダメさにかりかりしないときはなかった。“好きでなければ、怒らない。 好きだから怒る”という誰かの言葉を中々信じられないカンナだが、とても説得力がある,温かみのある言葉である。
 見所はどこか。 もちろん、意外な役者さんの意外な役どころだったり,主人公を中心とした出演者たちの殻を破ったかのごとくのはじっけっぷりも一つだが,個人的に一番いいなと思ったのが、ジミーである。 ボーカルだけど、病気の後遺症でまともに言葉が話せないが意外に身軽だったり,ヤングやアキオのように底抜けに明るかったり。 意思表示の仕方がとても面白い。 
 ジミーの場面では二つ印象深い場面がある。 それはカンナにインタビューを受けるときの,カンナの質問とは関係ないリアクションなのにカンナの質問の答えとしても筋が通っているという,アンジャッシュのコントのような状態。 ジミーがその時見せた涙の理由がポイントだ。
 さらにもう一つ。 いつまにか物語が進むに連れてジミーに奇跡がおき始め,ついにはまともに言葉が…というくだりである。 ホントは普通に意志伝達ができるのに隠してたみたいな感じがする、そして他のメンバーたちの話に参加しているという。
 時が過ぎ,はじめはダメダメだった少年メリケンサックは カンナの登場で再びステージに立つようになり、バンドマンの心を思い出し バンドとして奇跡起こす。 “みっともなく見られて当たり前、プライドよりも己の音楽に誇りを持って,ただ楽しもう”という言葉でスイッチの入った少年メリケンサックは,中年となった今も輝いていてカッコいい。 
 乱暴で問題児なアキオ。 だが、カンナにかける言葉の数々から人間味のあるところが窺える。 この言葉にカンナは本当に自分が求めるものに気づかされ、自分を見つめなおすことになる。 『少年メリケンサック』はそういう物語なのだと思う。 結果的には“少年メリケンサック”は最初と変わらず、カンナが成長…というか変わっていく話である。 意外な展開、カンナの壊れっぷり、奇跡…見所がたくさんだ。

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by jd69sparrow | 2009-02-20 18:02 | 映画タイトル さ行