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大奥

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 日本の時代に徳川の世が訪れたとき、“大奥”は作られた。 それは徳川の血が絶えることのないように設けられた女ばかりの場所、そこに入った女たちは決して自由に外へ出ることは許されない。
 三年にわたりドラマ・シリーズが続いた「大奥」は“大奥”、“大奥 第一章”、“大奥 花の乱”とシリーズがつながっている。大奥の最期、はじまり、最も華やか時代とシリーズはそれぞれ分かれている。 そして映画化。
 「大奥」と言えば、大奥で暮らし,将軍のために日々尽くす女たちの戦いや争いを描いた物語だと連想していた。しかし、そこには人間ドラマもが描かれているのだ。 将軍には正室(身分の高い正妻)がいて、さらに側室(将軍のめかけ)がいる。将軍の子どもをもうけることできた者こそが正室となり,大奥の中で特別に高い位を得ることができる、その影ではそれをよく思わない女たちがいて、争いが起こる。 大奥の女たちの間には様々なカタチで争いが具現化され、それは相手をおびやかすようなものもある。 大奥の女たちそれは度の強すぎることと思われることも珍しくはなかっただろう。 大奥の世界で生きる者たちには精神力が何よりも支えとなる。
 「大奥」では女たちの本音が多く語られ、恐ろしさをも見受けられる。しかし、「大奥」に登場する女たちの人間像は現代に生きる人々の基盤となる部分も多いと思う。
 第七代将軍・家継の時代、大奥をまとめるは若くして大奥取締役となった絵島であった。1712年、徳川の将軍はわずか五歳の幼君で、この幼き将軍には政をする力はなく、間部詮房(まなべあきふさ)という将軍の補佐役とも言うべき側用人が事実上,政を握っていたのだ。 家継の母親である月光院は将軍の生母となるが大奥での月光院の力はなく,それを支えていたのが絵島と間部である。月光院へ反感を持つ者は少なくなかった。 先代の家宜の正室だった天英院をはじめとする女たちである。 大奥で暮らし、恋を知らずに生きてきた絵島は外へ出ることのできる数少ない,ある日 歌舞伎役者の生島新五郎という男に出会う。二人はそれぞれお互いに一線おいていたが天英院の策略が影を落とすその状況下で次第に恋に落ちていく。 さらに城の中で月光院の恋があり、二つの恋の物語がここにある。
 大奥の中での物語だけでなく、大奥の外にある世界の両方が登場し、絵島と生島の身分違いの恋がある。 鎖にしばられることなく生きている生島、大奥という自分のいる場所から心を動かすことをせず,月光院への忠誠心を何よりも 自分よりも第一に考え,仕えることや仕事からの責任を果たすことだけを思い生きている絵島、生きる世界が違い 生きる目的もまた違う。けれどどんなにかけ離れていようとも隔たりは隔たりではなくなる。
 絵島には欲というものより忠誠を誓う心意気を持つ人物。そして潔くもあり,一時の夢であろうともそれを知ることができたこと、できることが彼女の幸せであるようだ。 クライマックスでの絵島の姿は清くとても心の美しさを感じさせる。希望が目の前で消えようとも欲にすがることなく、自分の進むべき道を自らわきまえている。 ほんの少しの希望と夢が絵島にとっては“幸せ”であるようだ。
 憎しみを持つ女たち,天英院と天英院派の大奥の女たちには恐ろしさがある。 けれどそれは“大奥”という環境が彼女たちそのように生きさせているという。確かに冷酷さが多く見られるけれど、悪役としては映らない。 主人公・絵島たちと天英院側の人々はあくまで敵対関係におかれているのだ。 大奥の女たちの生き様は様々であるが、共感できるもの,納得のいくことは多く含まれていて、(大奥の)誰に対しても否の言葉を浴びせることはできない。大奥の中ではそこに住む女たちの気持ちや感情の交差するところ。
 それぞれ一人一人が持つ感情が個々のものとして見ることができ、その本音であったり,心が動く描写を見るのはとてもおもしろい。 将軍の率いる社会、女たちの力によりその活躍があったというような話がある。実際、大奥の女たちの力は恐ろしくさえもある。 彼女たちの力で世を左右させ動かす,この将軍家,あるいは日本の社会がこの時動いていたのではないだろうか。
 物語のおもしろさも魅力であるが、映像の美しさも魅力といえることだろう。大奥の背景と世界は色鮮やかに彩られていて、身分に応じて異なる衣装,文化も綺麗である。 そして、絵島と生島の恋の後ろに広がる世界もまた美しい物語としても美しい。

by jd69sparrow | 2007-01-02 13:57 | 映画タイトル あ行